●付加価値こそが、企業経営を理解するツボ
前回まで、会計におけるPLとBSの意味するところと、その関係性について触れました。細かなことは端折っていますが、その「意味」と「関係」を押さえることこそ、会計を理解するツボなのです。
ところで、僕が中小企業診断士や簿記の学習をしていた時、もう一つ、もっと早くわかっていればよかったのに、と思ったことがあります。それが「付加価値」です。
付加価値という言葉は、よく使いますよね。これは付加価値の高い商品だとか、仕事に付加価値をつけよう、とか。ただ、会計における付加価値はしっかりと定義されています。そして、それを理解するといろんなことが見えてくるのです。
例えば「日本は欧米に比べて生産性の伸びが低い」とか、「中小企業は大企業に比べると生産性が低い」とか、「DXによって生産性を高めよう」とか言う場合の「生産性」とは、厳密には「付加価値生産性」のことです。
ですので、付加価値という会計のツボを確実に押さえておきましょう。
付加価値という概念は、以下のように理解すると良いと思います。
いろんな経営資源で構成された会社という箱に、外からが何か(商品の仕入れ等)をインプットし、そのインプットした資源が会社を通り抜けることで、インプットより価値の高いアウトプット(売上高)に生まれ変わる。付加価値は、そのインプットとアウトプットの差額のことを意味しています。
●付加価値額の計算方法には2種類ある
付加価値の計算方法には、実は2通りあります。
① 中小企業庁方式(控除法)
② 日銀方式(加算法)
まず①の中小企業方式(控除法)からみていきます。この算式は以下のとおりです。
付加価値額=売上高(算出量)ー 外部購入費(投入量)
これはまさに、上図で示した考え方です。
小売業の場合、投入量のほとんどは商品の仕入原価で、売上高が産出量になるので、粗利益(売上総利益)がそのままニアイコール付加価値額となります。中小企業には流通サービス業が多いため、中小企業庁ではこうした簡便な計算方法を取っているのだと思います。
製造業の場合は少し複雑で、原材料を仕入れてすべてを自社内で加工する場合もあれば、外注加工費として外注する場合もある。計算が少し複雑になるわけです。
付加価値の計算には、もう一つ、②日銀方式(加算法)というものがあります。これは決算書から付加価値額を求めやすくしたもので、以下を足し算して求めます。
○人件費(人)
○減価償却費(物)
○賃借料(場所)
○租税公課(国)
○支払利息(金)
○当期利益(株主)
つまり、会社を存立させている経営資源を要素分解し、それぞの金額を足し算して産出した付加価値額を計算しているわけです。
●生産性とは、付加価値額を最重要経営資源で割ったもの
「生産性」というのは、この付加価値を主たる生産手段で割ったものです。具体的には、社員数(1人当付加価値=労働生産性)、店舗・機械設備(1坪/1台当付加価値=設備生産性)、活動時間(1時間当付加価値=時間生産性)など、付加価値をいかに効率的に算出できたか、それが生産性指標となるわけです。