『アンサングシンデレラ』というテレビドラマで薬剤師の仕事について知った方が多いと思います。
私は、病院薬剤師ではなく、薬局薬剤師なので、仕事の内容は少し違いますが、患者さんと病気に向き合う志は同じです。心と体と生活を削って向き合ってきました。
アンサング(賞賛されない)とはよく言ったもので、私達の仕事はまさしくそうです。世の中の人達はこの仕事のことをほとんど知らないのではないでしょうか。処方箋通りに薬をピッキングして患者さんに渡すのが仕事だと思われているように感じます。
簡単に言うとその通りですが、セミの一生に例えるなら、それはセミが地上で生きる7日間のようなもので、セミが地面の中で過ごす7年に相当する仕事は、ほとんど誰にも知られていません。
それでいいと思っていました。私達薬剤師は、ちょっと世間とずれたところで、世俗を離れて、清く正しく生きています。見えないところでひっそりと。
でも、コロナ禍で考えが変わりました。薬が関わるところには、必ず私達薬剤師がいます。皆頑張っています。今は色々と落ち着いてきましたが、それでもまだまだ続いています。同じ仕事をしている友人、知人達も、戸惑いながらも手探りで、人知れず本当に頑張っています。
だから、もう少しこの仕事を知ってもらえるように、この場所を借りて綴っていこうと思います。
そして、もう一つ書く目的があります⁎⁺˳✧
薬剤師として働いてきて、様々な患者さん達と関わるなかで感じたことは、心とからだの健康は、双方向に深く関わっているということです。
特に人生の質を視点に考えた時、心の状態《在り方》はとても大きく影響します。
治らない病気ではないのに、薬を飲み続けていても、ずっと症状が良くならない方が少なくありません。
逆に不治の病であっても、難病で一生病気と付き合っていかなければならなくても笑顔で生きている方達もいます。
ストレスが病気の原因の一つになっている病気もたくさんあります。
例えば、災害後に増える病気に「たこつぼ型心筋症」というのがあります。
精神的な過度のストレスを受けた後に、心臓筋肉の一部がが収縮しにくくなり、正常に血液を送り出すことができなくなる病気です。
心臓の動きが悪くなった形が、たこ漁で使われるたこつぼのような形に見えるため、この病名がつけられました。突然大きなストレスがかかると、自律神経が極度に混乱し、心臓の一部が硬直し動かなくなってしまい、心筋障害となってしまうのです。
突然の胸の痛みや圧迫感、息切れなどの、心筋梗塞のような症状が起こる病気です。
また、ストレスや精神的な病気が痛みを引き起こすことがあります。
数年前、うつ病の薬である抗うつ薬に、痛みの効能が追加になり、話題になりましたが、それ以前から既にからだの痛みに対して使われていました。
うつ病にも、痛みにも、セロトニンやノルアドレナリンと言った神経伝達物質が関与しており、ストレスが密接な関係にあることがわかります。
他にも、本当にたくさんの体の病気と心の病気がストレスと深く関わっています。
私の薬局にも、心療内科や精神科に通院していて、薬を処方されている方がたくさん来局します。症状がひどくなって、日常生活に支障が出るようになって、初めて受診される方が多いと感じます。
病気が進行してからでは、抗うつ薬や抗不安薬、向精神薬など、様々な薬を何年も長期間服用しなくてはなりません。
そうなる前に、無理をしている自分に気づいて労ってあげて欲しい。心の声を聴いて欲しい。
薬局に来る患者さん達を見ていると、疲れている方が実に多いです。
心に余裕を持って、尊い毎日を楽しく、幸せに、笑顔で過ごしてほしいと心から願っています。