🔷R07_Ⅲ-1|過去問題
2010年代後半より、建設分野におけるICT施工やデジタル技術の活用が推進され、生産性向上にも一定の効果がみられている。国土交通省は2016年度にICTの活用を進め、建設現場の生産性を2割向上させることを目標に掲げた。その結果、2022年度時点で直轄工事の87%にICTが導入され、作業時間は平均21%短縮された。測量では、ドローンの活用により、従来の4割の人工で作業が可能となった。施工管理においても、3D計測技術の普及が進んでいる。また、ICTの活用は都道府県・政令指定都市や民間でも広がっている。
一方で、生産年齢人口の減少や高齢化、気候変動による災害の激甚化、インフラの老朽化が進む中、担い手不足は依然として深刻である。こうした状況の中、社会資本の整備・維持管理を持続可能なものとするには、ICT活用とともに、建設生産プロセス全体の高度化を図るなど、さらなる生産性の向上が求められる。このような背景を踏まえ、地盤構造物(盛土、切土、擁壁、構造物基礎等)におけるDX(デジタル・トランスフォーメーション)による生産性向上について、土質及び基礎を専門とする技術者の立場から以下の問いに答えよ。
(1)多面的な観点から複数の技術課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その技術課題の内容を示せ。(※)
(※)解答の際には必ず観点を述べてから課題を示せ。
(2)前問(1)で抽出した技術課題のうち最も重要と考える技術課題を1つ挙げ、その技術課題に対する3つ以上の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
「日本技術士会」HP
🔷R07_Ⅲ-1|骨子例
1.地盤構造物DXの多面的技術課題
〇観点1:地盤調査・解析技術の高度化
・従来試験の限界とリアルタイムモニタリング技術
・地盤情報データベースの標準化と統合活用
〇観点2:施工管理・品質管理の自動化
・軟弱地盤対策工法の施工品質自動判定
・ICT技術による品質管理の自動化とリアルタイム評価
〇観点3:設計・維持管理の効率化
・BIM/CIMと地盤解析ソフトウェアの連携
・AI技術による地盤解析の高精度化・迅速化
2.最重要課題およびその解決策
▼最重要課題
・面的・立体的地盤情報の処理・解析手法確立
・設計精度向上と施工リスク低減の同時実現
▽解決策1:統合地盤情報管理システムの構築
・各種土質試験データの統一フォーマット化
・3次元地盤モデル自動生成システム開発
▽解決策2:AIによる地盤解析の自動化
・計算プロセスのAI自動実行
・機械学習による液状化発生確率予測
▽解決策3:リアルタイム施工監視システム
・IoTセンサによる品質管理自動化
・AI解析による改良体均質性即座評価
3.解決策実行に伴うリスク及びその対策
1)AIモデルの過学習と誤判定リスク
・学習データ偏りによる予測精度低下
・基礎構造物安全性への重大影響
2)システム障害時の施工継続困難
・通信障害・サーバーダウンによる施工管理不能
・工程遅延と品質低下発生
3)技術者のスキル低下と責任所在の不明確化
・地盤工学的判断能力の低下
・予期せぬ地盤変状への対応困難