🔶R07_I-2|過去問題
製品・サービスの環境負荷を評価する場合、原料の生産から製造、運用及び廃棄に至る生涯にわたって環境影響を評価するライフ・サイクル・アセスメント(LCA)の手法が重要になる。船舶輸送における地球温暖化ガス(GHG)排出低減について、局所的な効果を評価して温暖化対策の議論がなされることがあるが、これでは本質的なGHG排出低減方策にならず、LCAの観点からそのプロセス全体のGHG排出の低減効果を評価すべきである。
(1)船舶輸送におけるGHG排出低減方策を、LCAの手法を適用して検討しようとした場合に想定される技術課題を、船舶・海洋部門の技術者として多面的な観点から3つ抽出し、観点を明記したうえで、その技術課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した技術課題のうち最も重要と考える技術課題を1つ挙げ、これを最も重要とした理由を述べよ。その技術課題に対する複数の解決策を、船舶・海洋部門の専門技術用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示した解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(1)~(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から題意に即して述べよ。
「日本技術士会」HP
🔶R07_I-2|骨子例
1.LCA適用時の多面的技術課題
〇観点1:燃料ライフサイクル評価の複雑性
・ゼロエミッション燃料の排出原単位定量化
・国際標準化された評価手法とトレーサビリティ構築
〇観点2:船舶運航システムの総合的評価
・CII・EEOI統合評価手法構築
・全船的エネルギーフロー解析とLCAインベントリ組み込み
〇観点3:船舶建造・解体段階の環境負荷評価
・Cradle-to-Graveインベントリ算定
・造船所工程別エネルギー消費原単位測定・標準化
2.最重要課題およびその解決策
▼最重要課題
・燃料ライフサイクル評価の複雑性
・W2W評価結果による船舶競争力決定要因
▽解決策1:燃料別LCA評価データベースの構築
・ISO 14040/14044準拠W2T排出原単位標準化
・動的LCAデータベース構築
▽解決策2:総合燃料評価システムの開発
・ライフサイクルGHG排出量自動算定システム構築
・AI活用実運航データ解析
▽解決策3:燃料トレーサビリティ技術の導入
・ブロックチェーン活用CoC(Chain of Custody)システム構築
・デジタル燃料証明書連携
3.新たに生じうるリスクへの対応策
◇リスク及びその対応策1:データ精度・信頼性の限界とその対策
・Greenwashingや測定機器不備による精度限界リスク
・ISO 19011基準CoC認証と技術監査実施
◇リスク及びその対応策2:技術的複雑性による運用負荷増大とその対策
・中小海運事業者でのシステム誤用や評価形骸化リスク
・GUI簡素化とAPI連携による負荷最小化
4.業務遂行に必要な要件
☆技術者としての倫理の観点
・科学的根拠による客観的環境負荷評価提供
・専門性維持と評価不確実性の誠実な情報提供
☆社会の持続可能性の観点
・統合評価による環境負荷最小化
・世代間公平性確保による長期的技術選択支援