🔶R07_Ⅲ-2|過去問題
我が国の公共工事では、発注者が積算基準に従い上限としての予定価格を定め、さらにダンピング防止の観点から最低制限価格または実質的な下限としての調査基準価格を設定している。多くの場合、この上下限の範囲内でなければ落札できないことから、入札価格がこの範囲内に誘導され、応札者の技術開発やコスト縮減への意欲が起きにくいとの指摘もある。
一方、令和6年6月に担い手3法(建設業法・公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律・公共工事の品質確保の促進に関する法律)が改正され、担い手確保に向けて労働者の処遇改善を図り、労務費の確保と賃金の行き渡りに取り組むことが盛り込まれたところであり、労務費の確保を前提とした競争環境が整いつつある。
このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)市場原理に基づくより健全な競争環境を実現するに当たり、多面的な観点から、発注者が行う積算や応札者の入札価格に関わる技術課題を3つ抽出し、それぞれの観点の明記とともに、その技術課題の内容を示せ。(*)
(*)解答の際には必ず観点を述べてから技術課題を示せ。
(2)前問(1)で抽出した技術課題のうち最も重要と考える技術課題を1つ挙げ、その技術課題に対する複数の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示した解決策に関連して新たに浮かび上がってくる将来的な懸念事項とそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
「日本技術士会」HP
🔶R07_Ⅲ-2|骨子例
1.積算・入札価格における技術課題
〇観点1:積算精度向上
・地質条件・立地特性の反映課題
・ICT施工機械導入効果の評価遅れ
〇観点2:施工計画立案における競争促進
・技術提案の価格競争反映不足
・VE提案制度の機能不全
〇観点3:労務費確保と競争環境両立
・働き方改革対応費用の積算差異
・将来投資的費用の評価不足
2.最重要課題およびその解決策
▼最重要課題
・積算精度向上の構造的課題
・技術革新阻害要因としての影響
▽解決策1:現場条件対応型積算システムの構築
・地質調査データベース連動機能
・BIM/CIMデータとの積算システム連携
▽解決策2:ICT・新技術効果の即時反映システム
・ICT建設機械稼働データ収集分析
・AI技術活用の施工実績データベース構築
▽解決策3:技術提案型積算評価制度の導入
・VE提案事前評価システム
・デジタルマネジメント技術効果の段階別評価
3.新たな懸念事項及びその対応策
◇懸念事項1:システム依存による技術者育成阻害への対応
・積算技術習得機会の減少懸念
・エクスプラナブルAI導入とOJT制度維持
◇懸念事項2:技術格差拡大による競争環境悪化への対応
・大手企業優位による中小企業排除懸念
・中小企業支援制度拡充と地域性評価