🔶R07_I-2|過去問題
技術の進歩、市場環境の変化、さらに不確実性の増大などを背景に、これまでの経営(例えば、戦略立案、財務管理、マーケティング、組織運営、生産管理など)では、データ活用の程度が異なり、一部の領域においては経験や直感に依存する意思決定が行われることもあった。今後は、これまでデータ活用が十分でなかった領域でも、データに基づく意思決定を強化することが求められる。このような中、データ駆動型経営は、現在のビジネス環境において企業の競争力を維持・向上させるための重要な要素の1つとなっている。
上記の状況を踏まえて以下の問いに答えよ。
(1)経営工学の技術者としての立場で、データ管理、意思決定、組織運用などの観点から、データ駆動型経営において取り組むべき3つの技術課題を抽出し、それぞれの内容を具体的に示せ。
(2)前問(1)で抽出した技術課題のうち、企業の競争力向上への影響、技術的及び組織的な実装の難易度、将来の発展可能性などを考慮して最も重要と考える技術課題を1つ挙げ、これを選んだ理由を述べよ。また、その技術課題に対する複数の解決策を、経営工学の専門用語を適切に交えて説明せよ。
(3)前問(2)で示した解決策を実行した際に生じる技術的、経済的、法的、倫理的な新たなリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえて説明せよ。
(4)前問(2)で示した解決策を実施する際に、技術者としての倫理的責任(例:データの透明性、公平性)と、社会の持続可能性(例:環境負荷の削減、人的資源の最適活用)を確保するために必要な要件を述べよ。
「日本技術士会」HP
🔶R07_I-2|骨子例
1.データ駆動型経営の技術課題
〇観点1:統合的データプラットフォームの構築
・データウェアハウス設計による多様なデータソース統合
・ETLプロセス自動化によるデータ品質・セキュリティ確保
〇観点2:予測分析による意思決定支援システムの開発
・機械学習・統計的手法による高精度予測モデル構築
・ダッシュボード・可視化ツールによるリアルタイム監視機能
〇観点3:データリテラシー向上のための組織改革
・全組織レベルでのデータ分析スキル標準化・教育体制
・データサイエンティスト確保とガバナンス体制確立
2.最重要課題およびその解決策
▼最も重要な技術課題
・予測分析による意思決定支援システム開発の最優先化
・企業競争力向上とAI・機械学習技術活用による実現可能性
▽解決策1:統計的品質管理(SQC)に基づく予測モデル構築
・管理図・工程能力指数による生産プロセス変動要因特定
・多変量解析による需要予測精度向上と異常検知機能
▽解決策2:オペレーションズリサーチ(OR)手法による最適化
・線形計画法による生産計画最適化モデル構築
・待ち行列理論とシミュレーション手法による予測分析
▽解決策3:機械学習とビッグデータ分析の融合
・深層学習による非線形関係の複雑パターン学習
・アンサンブル学習による予測精度・安定性向上
3.解決策実行に伴う新たなリスク及びその対策
1)技術的リスクとシステム信頼性の確保
・過学習・バイアス対策によるクロスバリデーション検証
・FMEA・PDCAサイクルによる継続的改善体制
2)経済的リスクと投資収益性の管理
・LCC分析による総保有コスト算定と段階的導入
・NPV・IRR分析による投資判断の客観性確保
3)法的・倫理的リスクとガバナンス体制の整備
・データガバナンス体制による法令遵守徹底
・プライバシー・バイ・デザインによる個人データ保護
4.解決策実施に必要な要件
☆技術者としての倫理的責任確保の観点
・説明可能AI実装によるデータ分析結果透明性確保
・統計的公平性評価指標とデータ品質管理プロセス
☆社会の持続可能性確保の観点
・エネルギー効率的アルゴリズム設計によるCO2排出量削減
・人材配置最適化と循環型経営モデル構築