ある春の風の強い日。
ロロが森のお気に入りの「たんぽぽの丘」で、ふわふわとお昼寝をしていると、カラフルな羽が風に乗ってくるくる舞いながら、ふいに近づいてきました。
「ロ〜ロ〜!たいへんたいへんっ!」
元気いっぱいに声をかけてきたのは、ちょうちょのミミ。
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ミミは、おしゃべりで明るくて、羽のように自由で軽やかな性格の女の子。
パステルカラーにきらきら光る羽を広げて、いつも森のあちこちを飛び回っています。
この日も、森の子たちが遊んでいた「葉っぱのブランコ」が、風に飛ばされて大きな木の上に引っかかってしまったのを見て、ロロのところへ助けを求めにやってきたのでした。
🦋「取ってあげたいけど、私ひとりじゃムリ〜!」
ミミは自分では手が届かなくても、誰かを思って行動できる、そんな心のやさしいちょうちょです。
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ロロはゆっくりと立ち上がり、ミミの真剣なまなざしを見てうなずきます。
🐼「じゃあ、いっしょに取ろう!」
ロロが木の下に立ち、ミミがその上をくるくる飛びながら「もっと右〜!そこそこ!その枝をゆらしてみて〜!」と元気にナビゲート。
葉っぱのブランコが、ひらひらと風に舞って落ちてくると――
🦋「やったぁぁぁっ!さっすがロロっ!!」
リスやモモンガの子たちも集まってきて、「ありがとう〜!」と口々にお礼を言いました。
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ミミは、ちいさな体で、森の声をよく聞いています。
葉のささやき、花の笑い声、風のうた。
それを全部、「きいてきたの!」とロロに教えてくれるのがミミの日課。
ときどきはおしゃべりが止まらなくて、ロロが「うんうん」と聞きながらうとうとしちゃうこともあるけれど、それでもミミはにこにこ嬉しそうに話しつづけます。
ミミにとって話すことは「とどけること」。
やさしい気持ち、うれしい気持ち、ちょっぴりさみしい気持ちも、ぜんぶ言葉にして届けるのが得意なのです。
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ブランコを無事に木の根元に戻したあと、ロロとミミは並んでちょこんと座りました。
ふたりのまわりには風がふんわりと流れ、
空には、夕焼けとミミの羽のきらめきが重なって——
まるで空そのものが、やさしく微笑んでいるようでした。
🦋「ロロって、やっぱり森のヒーローだね!」
🐼「いや〜、ミミが教えてくれたからだよ〜」
そんなふたりの笑い声が、たんぽぽの丘にふわりと舞い上がっていきました。