❄️目次|ロロと雪の手紙
〜シロクマのフロルに会いにいく冒険〜
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第1章 雪の手紙
春の日に届いた、なつかしい友だちからの一通の便り。
ロロの胸が、そっと揺れはじめる。
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第2章 迷いの森
会いたいけど、こわい。
ミミのやさしい言葉が、ロロの背中を押してくれる。
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第3章 思い出の足あと
雪の国へ向かう旅の途中、出会ったのはカラフルなドラゴン・フレイム。
ちいさな焚き火のそばで、心があたたまる。
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第4章 白い静けさの中で
ついに再会したロロとフロル。
雪のかまくらの中で、静かに語られる本当の理由。
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最終章 雪がとける前に
朝の光の中で交わした「またね」の約束。
ふたりの心に、春が芽吹く。
第1章 雪の手紙
🐼
春の陽ざしが、森にぽかぽかと降りそそいでいた。
パンダのロロは、丘の上のベンチにすわって、のんびりと空を見上げていた。
あたたかい風が、ふわりとほっぺをなでる。
「ああ、いい天気だなぁ…」と、ロロはつぶやいた。
そんなときだった。
風にのって、ひらり、と白いものが舞い降りてきた。
手のひらに落ちたそれは、小さな封筒だった。
「ん?これは…お手紙?」
ロロはゆっくりと封を開けた。
中には、すこしだけ冷たさの残る、雪色の便箋が入っていた。
文字は見おぼえのあるやさしい筆跡。
『ロロへ
元気にしているかい?
森にも春が来たころかな。
こっちはまだ雪がたくさん積もっているよ。
そろそろ、また会いにおいで。
待ってるよ。 フロルより』
「……フロル」
ロロは、思わず声に出していた。
シロクマのフロル。
ずっと昔、ロロがまだ子どもだったころ、北の国の旅で出会った友だち。
真っ白で大きな体、だけどとてもやさしくて、静かな目をしていた。
ふたりは雪のなかで、毎日いっしょに遊んだ。
でも、いつしか手紙は届かなくなっていた。
あの冬の日をさいごに、ふたりは会っていなかった。
それが、今になって——
「どうして、今なんだろう……」
ロロの胸の奥が、少しざわざわとした。
うれしいような、こわいような、そんな気持ち。
手紙のぬくもりを、そっと胸に抱きしめた。
風がふたたび吹いて、木の葉がさわさわと揺れた。
遠くの空に、白い雲がゆっくり流れている。
ロロはしばらく黙って空を見上げたあと、ぽつりと言った。
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第2章 迷いの森
🐼
「行ったほうがいいのかな……」
ロロは、森のなかを歩きながら、ぽつりとつぶやいた。
フロルからの手紙をポケットにしまったまま、何度も何度も、同じ道をぐるぐる歩いている。
思い出すのは、あの最後の冬の日。
雪がしんしんと降っていた。
「また会おうね」と手を振ったフロルの姿は、だんだんと雪にかすんで見えなくなった。
それから何年もたって、突然届いた手紙。
でも、文面には「また会いにおいで」としか書いていない。
どうして今なのか、本当の理由は書かれていなかった。
「急に呼ぶなんて、もしかして……」
ロロの胸の奥が、きゅっとつまる。
そのとき——
葉のかさかさする音といっしょに、小さな声が聞こえてきた。
「ロ〜ロ〜!迷ってる顔してるね〜!」
ふり返ると、ちょうちょのミミ🦋がひらりと舞い降りてきた。
「こんにちは、ミミ……なんか、ちょっと、ね」
ロロはすこしだけ笑ってみせたけれど、ミミはすぐに察したようだった。
ロロの横にちょこんととまり、やさしく言った。
「フロルさんって、北の国のしろくまさんだよね?
前に話してくれた…雪の中で、秘密のかまくらを作ったって」
「うん。あの時は、ほんとに楽しかった……」
「じゃあ、また思い出の続きを作ってくればいいよ。
呼んでくれたってことは、きっと、ロロに会いたかったんだよ」
ミミの言葉に、ロロはふと空を見上げた。
森の葉の隙間から、白い雲がすーっと流れていく。
どこか、遠くへ向かっているように見えた。
「……そうだね。今、行かないときっと後悔する気がする」
ポケットからフロルの手紙を取り出し、ぎゅっとにぎる。
雪のにおいが、ほんのりとよみがえる。
ミミがにっこりと笑って、こう言った。
「ロロなら、大丈夫。フロルさん、きっと喜ぶよ。
うんとあったかいマフラー巻いて、気をつけて行ってらっしゃい!」
「ありがとう、ミミ」
ロロは大きくうなずいた。
そうと決まれば、旅の準備だ。
次の日の朝。
ロロは森のみんなに見送られながら、北の国へ向かって出発した。
彼の背中には、小さなリュックと、
大切な友だちにもう一度会いたいという、まっすぐな想いがつまっていた。