🪵 はじめに – ロロのあいさつ
こんにちは。ぼくは、パンダのロロ。
森の奥にある、ちょっとひみつな場所で暮らしてるよ。
この森には、いろんな動物の友だちがいるんだ。
ちいさかったり、おっきかったり、やんちゃだったり、おっとりだったり。
にぎやかな日もあれば、しーんと静かな日もある。
でもね、どんな日も、どんな天気でも、
だれかと「いっしょにすごす時間」があれば、それだけで心がぽかぽかしてくるんだ。
このお話は、そんなぼくと仲間たちの「やさしい7日間」。
いつもよりちょっとだけ、ていねいに感じてみた一週間の記録なんだよ。
あわただしい日々のなかで、
ふっと深呼吸したくなったときに読んでもらえたらうれしいな。
じゃあ、いちばんはじめの月曜日から、お話をはじめるね。
🌈 月曜日:ルルと朝のかけっこ

月曜日の朝。
森にやわらかい朝日がさしこんできた。
ぼくは、いつものように木の下でのびをしていた。
🐆「ロロ〜っ!」
どこからか風のように走ってきたのは、
チーターの赤ちゃん、ルルだった。
🐆「今日はね、森の朝を走って感じたいの!」
目がきらきらしてて、しっぽもぴょんぴょん動いてる。
ルルは、朝が大好き。
とくに「まだだれも歩いてない道」を走るのが、いちばん楽しいんだって。
でもぼくは、のんびり歩くのが好き。
とくに朝は、ちょっとまどろみながら歩きたいタイプ。
🐼「ルル、ぼく走るのはちょっと…ゆっくりでもいい?」
🐆「うん、ロロのペースでいいよ!」
そう言ってルルは、ぼくのとなりをぴったり歩いてくれた。
森の中は、しずかだけどいろんな音がしてる。
小鳥のさえずり、葉っぱのゆれる音、土の下を流れる水の気配。
🐆「ねぇロロ、きょうの空、すごくきれいだね」
🐼「うん、ルルと歩くと、空まで違って見えるよ」
ふたりでてくてく歩いていると、
ふいにルルが立ち止まって、ぼくの耳元でささやいた。
🐆「ちょっとだけ走ってもいい?」
🐼「うん。いいよ。いってらっしゃい」
ルルは「やったー!」とひと声あげて、草の上をすべるように走っていった。
小さな足が、地面にぽんぽん跳ねて、風といっしょに走ってるみたいだった。
しばらくしてルルが戻ってきた。
🐆「ロロ〜!すっごい気持ちよかった〜!」
🐼「うん。見てたよ。風みたいだった」
ルルはちょこんとぼくの横にすわって、
ふぅっとひと息。少しはしゃぎすぎたみたい。
ぼくは自分の背中をトントンとたたいて言った。
🐼「ここ、ちょっとふかふかだよ。ひと休みする?」
ルルはくすっと笑って、ぼくの背中にもたれかかった。
🐆「ロロの背中って、なんか…落ち着く〜」
それからふたりで、すこしのあいだ、なにもしゃべらずに森を見てた。
木の葉の影がゆれて、鳥の声が遠くに聞こえて、
それを聞きながら、ぼくたちは深く、ゆっくり、呼吸をした。
🐆「ロロ、月曜日って、なんか特別だね」
🐼「うん。きっと“いちばん最初”の魔法がかかってるんだ」
森の風が、そっとぼくらのあいだをすりぬけていった。
なにもしてないようで、心がちゃんと動いてる。
そんな朝のかけっこは、いちばんやさしい月曜日の始まりだった。
🌈 火曜日:ボボとダンスのひととき

火曜日の朝、森の空気はどこかほわっとしていた。
空はうっすらくもってるけど、風がきもちいい。
そんな日にぴったりなのが、ゾウのボボとのんびり過ごす時間。
🐘「ロロ〜!きょうは“ゆれる日”にしよう!」
そう言って、鼻をぶんぶん振りながらやってきたボボ。
“ゆれる日”ってなに?って思ったけど、ボボにはちゃんと意味があるらしい。
🐘「ゆれる日ってのはね、からだをゆらして、きもちもゆらして、
とにかくたのしくなる日なんだよ〜!」
どうやら今日は、ダンスの日らしい。
⸻
ボボは、おおきな体に似合わず、音楽がだいすき。
なにも聞こえてないのに、
🐘「ぼくのなかに曲がながれてるんだ〜」
って、リズムをとりながらステップを踏む。
鼻をふんっ!とふって、足を「どしっ!どしっ!」とふみならし、
たまに回転して、
🐘「ふわっ!」
と耳がぶつかって転ぶ。
🐼「…だ、大丈夫?ボボ?」
🐘「えへへ〜ちょっとだけ重力に負けた〜」
その姿があまりにおかしくて、ぼくはおなかをかかえて笑ってしまった。
⸻
ダンスの後は、葉っぱのベンチでひとやすみ。
🐘「ねえロロ。ぼくね、夢があるんだ」
🐼「夢?」
🐘「うん、森のステージで“おおきなステップ大会”を開くこと!」
どうやら、ボボは森じゅうの動物たちとダンスしたいらしい。
自分がステージの真ん中に立って、みんなで「ぐるぐるステップ」をするんだって。
🐘「ロロは司会してね〜」
🐼「ぼく、しゃべるだけ?踊らなくていい?」
🐘「うん。でも、時々はおどって!」
…なかなかハードル高いな、と思いつつ、
ボボのきらきらした目を見て、なんだか本当に実現しそうな気がしてきた。
⸻
午後、ふたりで森の広場に行って、もう一度「ぐるぐるステップ」の練習。
ぼくは最初、足を前に出すだけで精いっぱいだったけど、
ボボが大げさに見本を見せてくれるから、だんだん楽しくなってきた。
🐘「いち、に、さん、ぐる〜ん!」
🐘「いち、に、さん、ずるっ…どてっ!」
もちろんまた転んだボボ。今度はシダの葉っぱに顔からダイブ。
でも本人は、
🐘「葉っぱまくらでちょー快適〜」
ってごろごろ転がって笑ってる。
⸻
陽が少しずつ傾いて、森がオレンジ色に染まってきたころ、
ふたりで空を見上げた。
🐘「ロロ、今日もダンスできてよかったなぁ」
🐼「うん。笑いすぎてほっぺがつりそうだけど」
🐘「ロロのわらい声って、音楽みたいだよ〜」
そう言ってボボは、ぼくの背中にとんっと体をあずけてきた。
重たかったけど、なんだかあったかかった。
⸻
あたりがすこしずつ静かになって、風の音だけが聞こえる。
ボボはそのまま、すうすう寝息をたててお昼寝タイムに突入。
ぼくはそっと目を閉じて思った。
🐼「なにもしない時間って、こんなに幸せなんだなぁ」
たまにちょっと転んだり、くすっと笑ったり。
そんな日こそ、いちばん心がほぐれていく。
ボボと過ごす火曜日は、
まるでリズムにのって、やさしく心が踊る一日だった。
🌈 水曜日:ジンジンと水のうた

水曜日の朝、森はしっとりと静かだった。