🔷R07_I-1|過去問題
グローバルなビジネス展開を迎える中で、近年、物価高や円安などの背景から、金属製品にかかる大幅なコスト増や国内労働人口の急激な減少など、製造業を取り巻く環境は劇的に変化している。その変化に対応するために、金属産業においても製造プロセス全体を俯瞰した全体の最適化が必要であり、データとデジタル技術を活用して、マニュファクチュアリングに関する各チェーン(連鎖)を横断して最適化するスマートマニュファクチュアリングの構築が求められる。ここで、チェーンとは、①エンジニアリングチェーン、②サプライチェーン、③プロダクションチェーン、④サービスチェーンがある。例えば、①エンジニアリングチェーンとは、製品・工程設計を中心とした技術と情報をものづくり各機能に訴求する連鎖のことである。以上の状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。
(1)金属関連産業に携わる技術者の立場として、スマートマニュファクチュアリングを構築するための技術的な課題を多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した技術的な課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示した解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(1)~(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。
「日本技術士会」HP
🔷R07_I-1|骨子例
1.スマートマニュファクチュアリング構築の技術的課題
〇観点1:データ連携基盤の確立と相互運用性の確保
・工程間リアルタイム連携の不足とレガシーシステムの標準化
・高信頼性IoT基盤による品質データと操業パラメータの統合管理
〇観点2:製造プロセスのデジタルツイン化と自律制御技術の高度化
・多相・多成分系の組織形成と変形挙動の高精度シミュレーション
・AIによる最適操業条件導出とプロセス変動へのリアルタイム対応
〇観点3:技術伝承のデジタル化と専門デジタル人材の育成
・熟練技術者の暗黙知の形式知化手法の確立
・現場技術者のデータリテラシー向上と金属工学・データサイエンス融合教育
2.最重要課題およびその解決策
▼最重要課題:データ連携基盤の確立と相互運用性の確保
・製造プロセス全体最適化のためのリアルタイムデータ統合基盤
・デジタルツイン化とAI最適化の実効性を支える基盤構築
▽解決策1:標準通信規格を用いたデータプラットフォームの導入
・OPC UAやMQTT等国際標準規格による異種設備間セマンティックデータ交換
・クラウドとエッジの階層型システムによる制御・解析データの分散管理
▽解決策2:レガシーシステムのデジタル化とデータ取得の推進
・データ変換ゲートウェイによる既存PLC等からの即時データ取得
・ボトルネック工程優先の段階的更新計画の策定と実行
▽解決策3:データガバナンス体制の確立と品質保証
・センサー校正確認と異常値検出・補正の自動化によるデータ信頼性確保
・データ管理責任者配置と部門横断的データ利活用ルールの推進
3.リスク及びその対策
1)データ品質低下による誤判断リスク
・複数センサー冗長化と物理法則に基づくデータ整合性チェック
・重要操業変更時の熟練技術者承認体制の構築
2)サイバーセキュリティ脅威の増大リスク
・制御・情報ネットワークのDMZ分離と多層防御アーキテクチャ
・定期的脆弱性診断と緊急対応手順の整備・訓練
4.業務遂行に必要な要件・留意点
☆技術者としての倫理の観点
・操業データの正確性確保とAI判断ロジックの可視化による説明責任
・生産データの守秘義務厳守と新技術導入に伴う雇用変化への配慮
☆社会の持続可能性の観点
・プロセス最適化によるエネルギー消費・CO2排出削減とカーボンニュートラル貢献
・デジタルツインによる歩留まり向上と資源循環型経済の構築