🔶R07_I-2|過去問題
これまで新規の材料の開発には莫大な期間やコストが必要であったが、近年では様々な企業において材料開発における迅速化や、材料製造プロセスにおける最適化を目的にマテリアルズ・インフォマティクスやプロセスインフォマティクスの導入が積極的に進められている。
(1)金属材料の開発や生産においてマテリアルズ・インフォマティクスやプロセス・インフォマティクスを活用する際、技術者の立場で多面的な観点から3つの技術的な課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した技術的な課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策について専門技術用語を交えて述べよ。
(3)前問(2)で示した解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(1)~(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から題意に即して述べよ。
「日本技術士会」HP
🔶R07_I-2|骨子例
1.マテリアルズ・インフォマティクス活用における課題抽出
〇観点1:データ品質と学習モデルの精度確保
・データ量不足と測定条件の不統一による予測精度の低下
・限られた実験データからの高精度モデル構築の困難性
〇観点2:製造プロセスのリアルタイム制御技術
・多変量データの高速処理とフィードバック技術の必要性
・既存設備へのインフラ整備コストとプロセス変動への即応性不足
〇観点3:実験検証とシミュレーションの整合性
・ラボスケールと実機スケール間のギャップ
・計算モデルと実冶金現象との乖離
2.最重要課題およびその解決策
▼最重要課題:データ品質と学習モデルの精度確保
・高品質で統一性のある実験データ蓄積の必要性
・効率的な学習手法確立による材料開発迅速化
▽解決策1:転移学習とベイズ最適化の活用
・既存材料系知見の転移学習による新規材料系への適用
・ベイズ最適化による効率的な実験条件選定戦略
▽解決策2:マルチスケール組織解析データの統合
・多階層組織情報の統合データベース構築
・マルチモーダルデータによる高精度相関予測
▽解決策3:第一原理計算との融合による物理則制約
・物理則を制約条件とした予測結果の妥当性保証
・CALPHAD法による熱力学データ整備と信頼性向上
3.リスク及びその対策
◇リスク及びその対策1:過学習による実用性の欠如
・交差検証法による汎化性能の定量評価体制構築
・実機試作データの継続的フィードバックによるモデル更新
◇リスク及びその対策2:計算コスト増大による開発遅延
・HPCクラスタやクラウド環境による並列計算処理の実現
・代理モデル活用による計算負荷削減と物理則制約の維持
4.業務遂行に必要な要件
☆技術者としての倫理の観点
・学習データと予測結果の科学的根拠に基づく厳格な検証
・説明可能AI技術による技術的説明責任の履行
☆社会の持続可能性の観点
・試作回数削減による環境負荷低減への貢献
・ライフサイクル全体を考慮した材料設計の推進