🔶R07_I-2|過去問題
放射線(放射性物質も含む)は多くの分野で利用され、今後も拡大していくものと期待される。現在、医療・医学分野ではCTやPET等を用いた精密画像診断、陽子線等の粒子線治療や加速器BNCTが活用されている。また、標的アルファ線治療(TAT)の進展などにより医療用放射性核種の利用増大も見込まれる。工業分野では半導体加工等数々の分野やインフラ設備の老朽化に伴う非破壊検査の機会が増大すると考えられる。農業分野では放射線育種による品種改良に実績がある。一方、化学薬品等を用いることなく食品の衛生向上や保存期間延長を期待できる食品照射は国内ではジャガイモの発芽防止のみ実施された。国際的には香辛料やハーブ類などの照射食品は商業規模で流通がなされている。
照射食品に対する理解増進や科学的な知見蓄積により国内でも将来実施拡大されることが期待される。
上記の例に述べたように、放射線技術は引き続き様々な分野で利用・拡大が予想される状況下において以下の問いに答えよ。
(1)放射線防護又は利用の立場から、着実で安全・安心な放射線利用を推進するうえで多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。ただし、人材育成に関する課題は除くものとする。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と思われる課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示した解決策を実行した場合に生じうる将来的な問題とそれへの対策について、専門的な技術的検討を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(1)~(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会持続可能性の観点から題意に即して述べよ。
「日本技術士会」HP
🔶R07_I-2|骨子例
1.放射線利用推進における課題抽出
〇観点1:規制・制度整備
・食品照射分野の適用拡大に向けた科学的根拠整備
・医療分野における薬事承認プロセス迅速化
〇観点2:技術的信頼性確保
・医療用放射性核種の製造技術標準化と品質管理システム
・インフラ老朽化対応としての非破壊検査精度向上
〇観点3:社会受容性向上
・科学的事実に基づく正確な情報提供体制整備
・確率的影響と確定的影響の科学的理解普及
2.最重要課題およびその解決策
▼最重要課題
・社会受容性向上の阻害要因としての放射線理解不足
・技術的優位性に対する社会理解促進の必要性
▽解決策1:科学的エビデンスの体系化と情報発信
・放射線生物学的効果データベース構築と定量的評価
・ICRP勧告整合性評価書による透明性確保
▽解決策2:リスクコミュニケーション体制の構築
・ステークホルダー双方向対話システム確立
・専門機関連携によるファクトチェック機能強化
▽解決策3:教育・啓発プログラムの充実
・初等中等教育における放射線教育カリキュラム体系整備
・一般市民向けガンマ線スペクトロメトリー体験プログラム拡充
3.将来的な問題及びその対策
◇問題及びその対策1:情報過多による混乱
・専門機関による情報階層化と優先順位付け実施
・自然放射線レベル比較による相対的リスク評価システム構築
◇問題及びその対策2:専門性格差による信頼関係の悪化
・第一種放射線取扱主任者による地域密着型相談窓口設置
・個人線量計活用の市民参加型モニタリングシステム導入
◇問題及びその対策3:教育格差による社会分裂
・eラーニングシステム全国展開と測定器貸出制度
・NaI(Tl)シンチレーション検出器普及による科学的思考力底上げ
4.業務遂行に必要な要件
☆技術者としての倫理の観点
・ALARA原則に基づく公衆安全最優先の責務
・科学的客観性保持と専門知識濫用回避
☆社会の持続可能性の観点
・放射性廃棄物適正管理と将来世代負担軽減
・IAEA安全基準とICRP勧告調和によるグローバル視点対応