🔷R07_I-1|過去問題
経済産業省は、令和6年3月に「繊維製品の環境配慮設計に関するガイドライン」を公表した。このガイドラインでは、2026年度までにJIS化を予定し、環境配慮設計の普及率の向上と情報開示の推進を目指している。繊維製品を製造するに当たりリサイクルしやすい素材・設計や再生資源の活用など以下の11の環境配慮項目を設定し、事業者に対応を促している。
①環境負荷の少ない原材料の使用 ② GHG排出抑制、省エネルギー
③安全性への配慮 ④水資源への配慮 ⑤廃棄物の抑制 ⑥包装材の抑制
⑦繊維くずの発生抑制 ⑧長期使用 ⑨リペア・リユースサービスの活用
⑩易リサイクル設計 ⑪繊維製品のリサイクル
繊維産業のサプライチェーンに従事する各事業者は、このガイドラインに沿った取り組むべき環境配慮設計項目及びその評価基準や評価方法を設定することが求められている。
上記のような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。
(1)繊維製造等事業者が「環境配慮設計」に取り組むうえで、技術者としての立場で多面的な観点から3つの技術課題を抽出し、それぞれの観点を説明したうえで、その技術的課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した技術課題のうち最も重要と考える技術課題を1つ挙げ、その技術課題に対する複数の解決策を、繊維部門の専門技術に関する用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示した解決策を実行して生じる派生効果と懸念事項を述べ、専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。
(4)前問(1)~(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点を踏まえて述べよ。
「日本技術士会」HP
🔷R07_I-1|骨子例
1. 環境配慮設計の技術課題
(1) 易リサイクル設計と製品性能の両立
・複合化構造によるリサイクル障壁
・易分離可能な接着技術や単一ポリマーによる多機能化技術の確立
(2) 製造工程における低環境負荷プロセスの確立
・染色・仕上げ加工工程における水とエネルギー消費の課題
・デジタル捺染や超臨界CO2染色法などの低環境負荷プロセスの実用化
(3) リサイクル原料の品質安定化
・使用済み繊維製品の品質ばらつきと物性低下
・ケミカルリサイクル技術や高精度な混紡・混練技術の開発
2. 最重要課題およびその解決策
▼最重要課題:易リサイクル設計と製品性能の両立
・資源循環と環境負荷低減への直結
▽解決策1:単一ポリマーによる高機能化(モノマテリアル化)
・ポリマー改質技術と複合紡糸技術による機能性付与
・マテリアルリサイクル効率の向上
▽解決策2:易分離・易解体型接合・縫製技術の適用
・水溶性または低融点ポリマーを用いた縫製糸や接着剤の採用
・超音波接合やレーザー溶着による素材別リサイクルの促進
▽解決策3:ケミカルリサイクル対応設計
・解重合可能なポリマーと除去容易な染料・加工剤の選定
・ケミカルリサイクル事業者との連携による分子レベルでの完全再生
3. 派生効果および懸念事項への対応策
◇派生効果
・リサイクル工程簡素化による環境負荷削減とカーボンフットプリント低減
・処理コスト削減と再生繊維の品質安定化によるブランド価値向上
◇懸念事項及びその対応策1:製造コストの増加
・改質ポリマーや複合紡糸設備への初期投資による原価上昇
・製造工程統合・省人化とトレーサビリティシステム構築による経済性確保
◇懸念事項及びその対応策2:製品性能の低下リスク
・モノマテリアル化による耐久性や防水性低下の可能性
・高機能ポリマーの分子設計技術とプラズマ処理による性能付加
4. 業務遂行に必要な要件
☆技術者としての倫理の観点
・科学的根拠に基づく情報提供とグリーンウォッシュの回避
・有害物質管理の徹底と長期的な環境保全重視の技術的判断
☆社会の持続可能性の観点
・トレーサビリティとライフサイクルアセスメント導入による循環型システム構築
・中小事業者との技術協働とSDGs目標達成に向けた取組