🔶R07_I-2|過去問題
日本の食市場は、人口減少と高齢化の影響により、1人当たりの消費量・総需要ともに減少し、縮小が進んでいる。一方、世界の食市場は人口増加を背景に拡大している。
特にアジア地域は経済発展が続き、農産物や加工食品の需要も拡大傾向にある。こうした市場環境の変化に対応する新たなビジネス領域として、食領域の様々な社会課題を解決する技術を基盤としたフードテック市場が世界的に成長している。
(1)フードテックにより解決が期待される社会的課題に着目し、生物工学部門における技術者としての立場で多面的な観点から3つの技術課題を抽出し、観点を明記したうえで、その技術課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した技術課題のうち最も重要と考える技術課題を1つ挙げ、その技術課題に対する複数の解決策を生物工学部門の専門用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(1)~(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から題意に即して述べよ。
「日本技術士会」HP
🔶R07_I-2|骨子例
1.フードテック実現に向けた技術課題
(1)観点1:食料生産の持続可能性向上
・培養肉技術における大量培養システムの確立
・アニマルフリー培地の低コスト化と三次元高密度培養
(2)観点2:食品の機能性向上と健康寿命延伸
・代謝工学・酵素工学を活用した機能性成分の高生産性技術
・微生物生産経路の最適化と高精度品質評価技術
(3)観点3:食品安全性の確保と品質管理
・バイオセンサーとDNAバーコーディング技術の開発
・リアルタイム品質管理システムの構築
2.最重要課題およびその解決策
(1)最重要課題
・食料生産の持続可能性向上と培養肉技術の貢献
(2)解決策1:アニマルフリー培地の低コスト化
・遺伝子組換え技術による組換えタンパク質の大量生産
・オミクス解析を用いた培地組成の最適設計
(3)解決策2:組織工学を用いた三次元組織構造の再現
・生分解性ポリマー等のバイオマテリアル設計
・細胞分化制御技術による霜降り構造の再現
(4)解決策3:バイオリアクター工学による商業生産システムの確立
・灌流培養システムによる高密度培養の実現
・インライン分析技術を用いたリアルタイム自動制御
3.リスク及びその対策
(1)リスク1・その対策:細胞株の遺伝的安定性低下と品質変動
・セルバンク構築とゲノム編集技術による遺伝的変異の管理
・プロセスバリデーションによるロット間品質均一性の確保
(2)リスク2・その対策:培養システムにおける微生物汚染
・クローズドシステムとシングルユースシステムの導入
・バイオセンサー等によるリアルタイム検出と滅菌プロセス最適化
(3)リスク3・その対策:未知の生理活性物質生成による安全性懸念
・オミクス解析と質量分析による未知代謝産物の特定
・クロマトグラフィー等による不純物除去と長期毒性試験
4.業務遂行に必要な要件
(1)技術者としての倫理の観点
・科学的根拠に基づく安全性データの評価・公開
・遺伝子技術使用時の適切な情報開示と法規制遵守
(2)社会の持続可能性の観点
・ライフサイクルアセスメントによる環境負荷低減効果の定量評価
・段階的社会実装計画と資源循環型生産システムの構築
