🔶R07_I-2|過去問題
2024年3月に開催された第6回国連環境総会で、国連環境計画国際資源パネルは、「資源利用量の増加が3つの地球危機(気候変動・生物多様性の喪失・汚染)の主な要因となっている。我々の経済活動のための天然資源(化石燃料、鉱物、非金属鉱物、バイオマス)の採取・加工は、過去50年間で3倍に増加、現在、温室効果ガス排出量の55%以上、粒子状物質(PM)による健康影響の最大40%、土地の利用に関連した生物多様性損失の90%以上の要因となっており、気候変動や生物多様性に関する国際目標の達成を危機に晒している。」と指摘している。したがって、天然資源利用量を減らしながら、経済活動を維持し、気候変動・生物多様性の損失・汚染を防ぎ、資源の価値を最大限に引き出す資源効率性・循環性の向上が極めて重要である。
上記を踏まえて、以下の問いに答えよ。
(1)資源工学分野において、資源効率性・循環性を向上させ天然資源利用の削減を進めるうえで、技術者としての立場で多面的な観点から3つの技術課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その技術課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した技術課題のうち最も重要と考える技術課題を1つ挙げ、これを最も重要とした理由を述べたうえで、その技術課題に対する複数の解決策を、資源工学部門の専門技術用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示した解決策を実行して生じる波及効果及び懸念事項に対する対応策を、専門技術を踏まえて示せ。
(4)前問(1)~(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から題意に即して述べよ。
「日本技術士会」HP
🔶R07_I-2|骨子例
1. 資源効率性・循環性向上のための技術課題
〇観点1:天然資源の効率的利用
・低品位・難処理性鉱物資源の高度選別・回収技術
・センサ選別技術やバイオリーチングによる回収率最大化
〇観点2:資源循環の最大化
・都市鉱山資源の効率的前処理と高純度分離・回収プロセス
・物理選別技術の高度化とレアメタルの高純度分離
〇観点3:システム全体の最適化と環境負荷低減
・DX/AI活用によるリアルタイム最適化システム
・粉砕・破砕工程のエネルギー消費最適化
2. 最重要課題およびその解決策
▼最重要課題
・都市鉱山資源の効率的前処理と高純度分離・回収プロセス開発
・資源セキュリティ確保と環境負荷低減の実現
▽解決策1:高度選別技術の導入による前処理の効率化
・多段階物理選別システムの構築
・センサ選別装置による有価物濃縮率向上
▽解決策2:湿式製錬プロセスにおける選択的浸出・分離技術の確立
・目的金属の選択的浸出条件確立
・イオン交換樹脂や溶媒抽出法による高純度分離回収
▽解決策3:乾式製錬技術の高度化と環境負荷低減
・真空蒸留法や電気炉による揮発性金属回収
・プラズマ溶融技術による残渣無害化
3. 波及効果および懸念事項への対応策
◇波及効果
・資源セキュリティの強化と特定国依存度低減
・生態系破壊抑制とカーボンニュートラル達成への寄与
◇懸念事項・対応策1:処理コストの増大への対応
・設備共同利用とスケールメリット活用
・補助金制度と拡大生産者責任による費用負担
◇懸念事項・対応策2:環境リスクの管理
・排水・排ガス処理による環境基準遵守
・ISO14001に基づく継続的モニタリング
4. 業務遂行に必要な要件
☆技術者としての倫理の観点
・廃液・有害物質の適正処理と環境法規制遵守
・リスク評価結果の公開と第三者機関による安全性評価
☆社会の持続可能性の観点
・天然資源採掘量削減と将来世代への資源継承
・地域社会との共生とSDGs目標達成への貢献