🔶R07_I-2|過去問題
第五次循環型社会形成推進基本計画(令和6(2024)年8月閣議決定)では、循環経済への移行を関係者が一丸となって取り組むべき重要な政策課題として位置づけるとともに、循環型社会形成に向けた取組の中長期的な方向性として、5つの重点分野を提示している。また、同計画の決定に先立って公表された令和6年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書では、このうち3つの重点分野の趣旨が、同計画策定のポイントとして、次のとおり示されている。
① 資源循環のための事業者間連携によるライフサイクル全体での徹底的な資源循環
② 多種多様な地域の循環システムと地方創生の実現
③ 適正な国際資源循環体制の構築と循環産業の海外展開の推進
このことを踏まえて、以下の問いに答えよ。
(1)上記の3つのポイントのうち1つないし複数の中から、環境部門における技術者としての立場で多面的な観点から3つの技術課題を抽出し、観点を明記したうえで、その技術課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した技術課題のうち最も重要と考える技術課題を1つ挙げ、その技術課題に対する複数の解決策を、環境部門の専門技術用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行して生ずる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。
(4)前問(1)~(3)の業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を題意に即して述べよ。
「日本技術士会」HP
🔶R07_I-2|骨子例
1. 循環経済移行における多面的技術課題
(1)ライフサイクル全体での資源循環システム構築
・事業者間の情報共有と連携体制の不足
・LCAに基づく環境負荷評価システムの標準化
(2)地域特性に応じた循環システム設計
・都市部と地方部における廃棄物処理インフラの差異
・地域バイオマス資源や未利用資源の活用
(3)国際資源循環における環境リスク管理
・越境移動する循環資源の品質管理と有害物質管理
・循環産業の海外展開における技術移転手法
2. 最重要課題およびその解決策
▼最重要課題
・ライフサイクル全体での資源循環システム構築
▽解決策1:デジタル技術を活用したトレーサビリティプラットフォームの構築
・デジタルマテリアルパスポートによる素材情報のデータベース化
・マテリアルフロー可視化による需給マッチングの高度化
▽解決策2:拡大生産者責任(EPR)の強化とエコデザイン(DfE)の制度化
・設計段階でのDfE技術指針の義務化
・リサイクル材料使用率の目標設定と開示の制度化
▽解決策3:産業エコロジーに基づく地域・産業間共生ネットワークの構築
・副産物、廃棄物の他産業原料としての活用システム
・MFCA導入による経済効果の定量評価
3. 波及効果および懸念事項への対応策
◇波及効果
・リサイクル率と資源生産性の向上
・新たなビジネス機会創出と地域雇用促進
◇懸念事項及びその対応策1:情報セキュリティおよび企業秘密の漏洩リスク
・ブロックチェーンとアクセス権限階層化による安全性確保
・第三者認証機関によるセキュリティ監査の定期実施
◇懸念事項及びその対応策2:中小企業の技術的・経済的参画負担の増加
・公的補助金制度の拡充と技術支援センターによる支援
・業界団体による共通プラットフォーム提供と簡易版LCAツール開発
4. 業務遂行に必要な要件・留意点
☆技術者としての倫理の観点
・科学的根拠に基づく客観的データによる公正性の確保
・守秘義務の厳守と特定企業への利益誘導を避ける公平性
☆社会の持続可能性の観点
・将来世代への責任を果たす長期的視点での計画立案
・国際資源循環における環境正義の実現に配慮した技術移転
