🔷R07_I-1|過去問題
WWFジャパンの呼びかけで予防的アプローチとしてワンヘルス(One Health)に取り組む「人と動物、生態系の健康はひとつ~ワンヘルス共同宣言」が2021年に策定された。ワンヘルスは、人間の健康、動物の健康、環境の健全性が密接に関連しているという概念であり、持続可能な公衆衛生と生態系保全を実現するための重要なアプローチである。
(1)ワンヘルスの概念に沿って取り組むべき①新興感染症(又は人獣共通感染症)及び②抗菌薬に対する薬剤耐性菌に関する事例をそれぞれ挙げ、①及び②に共通する予防対策において、生物工学部門の技術者としての立場で課題を多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題の中から最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、生物工学部門の専門技術・手法を用いて示せ。
(3)前問(2)で示した解決策に関連した新たに浮かび上がってくる将来的な懸念事項とそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(1)~(3)の業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる必要な要件を述べよ。
「日本技術士会」HP
🔷R07_I-1|骨子例
1.ワンヘルスにおける多面的課題
◆事例の提示
・新興感染症と薬剤耐性菌の具体例
・野生動物・畜産由来の感染症事例
〇観点1:監視・検出技術の課題
・高感度バイオセンサーと次世代シーケンサーの普及不足
・セクター横断的なゲノム情報統合基盤の未確立
〇観点2:診断・予防技術開発の課題
・mRNA/DNAワクチン開発プラットフォームの未確立
・新規抗菌薬開発の停滞と統合的アプローチの欠如
〇観点3:環境中での伝播制御の課題
・耐性遺伝子・病原体の環境拡散メカニズムの未解明
・廃水処理技術の実用化遅延
2.最重要課題およびその解決策
▼最重要課題
・監視・検出技術の基盤整備
・早期検出と情報共有体制の構築
▽解決策1:統合的ゲノムサーベイランスシステムの構築
・次世代シーケンサーによるリアルタイム解析プラットフォーム
・メタゲノム解析による未知病原体の網羅的検出
▽解決策2:高感度バイオセンサーの開発と配備
・CRISPR-Cas技術応用の核酸検出システム
・ナノバイオ技術による携帯型センサーの現場配備
▽解決策3:AIを活用した予測・警報システムの開発
・機械学習によるオミクスデータと疫学情報の統合解析
・異常検知による早期警報とセクター間情報共有体制
3.将来的な懸念事項及びその対策
◇懸念事項及びその対策1:個人情報保護とデータセキュリティ
・ブロックチェーン技術による分散型データ管理
・匿名化技術と暗号化によるプライバシー保護
◇懸念事項及びその対策2:技術格差による監視体制の不均衡
・シングルユースシステムと簡易型検査キットの開発
・国際協力による技術移転と人材育成
◇懸念事項及びその対策3:AI予測モデルの誤判定と過信
・継続的なデータ更新とモデル再訓練
・専門家検証体制と人間知見の組み合わせ運用
4.業務遂行に必要な要件
☆技術者としての倫理の観点
・遺伝情報取り扱いにおけるインフォームドコンセントの徹底
・動物実験での3R原則遵守と透明性確保
☆社会の持続可能性の観点
・技術の低コスト化と途上国への技術移転
・抗菌薬適正使用と生態系影響の最小化