🔶R07_I-2|過去問題
近年、あらゆる産業において脱炭素が求められる中で、航空業界においても装備品・推進系の電動化技術や水素航空機向け技術開発、SAFの導入、脱炭素を推進するための排出権取引などの制度設計の導入など、広くその取組がなされている。その中でも現時点で有効な手段として、航空機の運航の改善による燃料消費を抑えた形での二酸化炭素の排出削減の役割は重要であると考えられる。
(1)航空機運航の分野における脱炭素を推進し、さらにそれが確実に実施されるために、特に航空機の管制運用や関連する技術に着目し、技術者として多面的な観点から、3つの技術課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した技術課題のうち最も重要と考える技術課題を1つ挙げ、その技術課題に対する複数の解決策を、航空・宇宙分野の専門技術用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示したすべて解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前間(1)~(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から題意に即して述べよ。
「日本技術士会」HP
🔶R07_I-2|骨子例
1.脱炭素推進のための技術課題
〇観点1:航空交通管理システムの最適化
・保守的経路設定による最適経路からの逸脱
・4D軌道管理技術によるCO2排出削減管制方式の研究・実証
〇観点2:次世代航法システムの導入促進
・従来型航法援助施設依存による経路制約
・GNSS基盤PBN適用拡大とRNP AR高精度航法による効率的空域利用
〇観点3:運航データの統合管理と検証
・航空会社・管制機関・空港間のデータ連携基盤未整備
・ADS-B監視データとFDR情報統合による運航効率指標算出プラットフォーム構築
2.最重要課題およびその解決策
▼最重要課題
・航空交通管理システムの最適化による管制運用の抜本的改善
・交通量増加対応と燃料消費削減の両立
▽解決策1:軌道ベース運用(TBO)の実装
・4D軌道管理技術による三次元位置と目標時刻の統合管理
・SWIM基盤によるAOCと管制システムのリアルタイム連携
▽解決策2:AI支援型管制システムの導入
・機械学習による交通流予測と最適経路計算の自動化
・管制官意思決定支援ツール(DST)とCD&R機能高度化
▽解決策3:動的空域管理の実現
・交通流に応じた柔軟な空域境界変更
・広域ATFMによる非効率迂回経路削減と軍民共用空域の動的再配分
3.リスク及びその対策
◇リスク及びその対策1:デジタルシステム依存による運航継続性低下
・SPOF排除のための地理的分散多重冗長系構築
・従来型航法援助施設の戦略的維持によるGNSS障害時バックアップ
◇リスク及びその対策2:アビオニクス性能多様性による運航効率格差拡大
・RNP性能レベル応じた段階的経路設定による安全な混在運用
・BADA活用による機種特性応じた個別最適化経路生成
◇リスク及びその対策3:高度自動化による管制官の状況認識低下
・ヒューマンファクター工学に基づくHMI設計と段階的切替機能
・管制シミュレータによる反復訓練での習熟度向上
4.業務遂行に必要な要件
☆技術者としての倫理の観点
・フェールセーフ原則に基づく技術的妥当性の厳格検証
・FMEA/FTAによるリスクアセスメントと技術的限界の誠実な開示
☆社会の持続可能性の観点
・ICAOのCORSIA等国際枠組みとの整合性確保
・技術的公平性確保と次世代への技術継承による持続可能な航空交通システム発展