🔶R07_I-2|過去問題
洪水や渇水などの気象災害への対応や高品質な水に対する需要の高まりなど、森林が持つ多面的機能である水源涵(かん)養機能に対する社会の期待は高い。保安林の中でも水源かん養保安林は保安林面積全体の約75%(令和4年3月時点)を占めるなど、水源かん養機能は森林管理上の面積割合も大きく、取扱い方によっては社会へ及ぼす影響が大きくなる。このため水源かん養機能の十分な発揮に繋がる森林管理が重要となっている。
上記の様な状況を踏まえて、以下の問に答えよ。
(1)森林の水源かん養機能を低下させる要因に関する技術課題について、技術者としての立場で多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その技術課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した技術課題のうち最も重要となる技術課題を1つ挙げ、これを最も重要とした理由を述べよ。その技術課題に対する複数の解決策を、森林部門の専門技術・手法を用いて示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(1)~(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から題意に即して述べよ。
「日本技術士会」HP
🔶R07_I-2|骨子例
1.水源涵養機能低下の技術課題
〇観点1:不適切な森林施業による森林構造の変質
・間伐遅延による林床植生の衰退と表面流出の発生
・針葉樹単層林における土壌機能の長期的低下
〇観点2:施業に伴う林地土壌の物理的機能の損耗
・高性能林業機械による土壌圧密と透水性の低下
・林地裸地化に伴う表土流失と雨水貯留能力の損失
〇観点3:気候変動の加速と森林の脆弱性増大
・集中豪雨による表面流出と洪水リスクの増大
・高温化に伴う蒸散作用の活発化と渇水リスクの高まり
2.最重要課題およびその解決策
▼最重要課題
・人工林の間伐遅延による構造的課題と機能回復の基盤性
▽解決策1:適正な間伐の体系的実施
・流域単位での優先順位設定と林内照度の確保
・適切な間伐率による樹冠発達と降雨遮断機能の向上
▽解決策2:複層林化施業による構造の多様化
・帯状・群状択伐による段階的更新の推進
・針広混交林化による多層構造と土壌浸透能の安定化
▽解決策3:長伐期施業への転換と土壌の成熟促進
・標準伐期齢延長による根系の深層発達
・伐採頻度削減による土壌有機物の蓄積促進
3.解決策実行に伴うリスク及びその対策
1)短期的な水源涵養機能の低下
・施業直後の林冠開放による一時的機能低下
・段階的伐採強度調整と低負荷型作業システムの導入
2)施業コストの増大と事業性の低下
・長伐期化による収益性悪化のリスク
・公的支援制度活用と林地集約化による経済性確保
4.業務遂行に必要な要件
☆技術者としての倫理の観点
・科学的知見に基づく客観的判断と公共性の優先
・透明性の高い情報提供と継続的モニタリングの実施
☆社会の持続可能性の観点
・気候変動適応策による森林の強靭化と将来世代への貢献
・地域参画型合意形成と持続的森林管理体制の定着