ある日のこと。ロロは森のはずれで、風にひらひらと舞う古い地図を見つけました。
その地図には「星の丘」とよばれる場所が描かれていて、そこにはこう書かれていました。
「ここに行ったら、まだ見ぬ友だちに会えるかも」
ロロは胸をどきどきさせながら、旅に出ました。
山をこえ、川をわたり、夜の空に導かれるように進み、ようやくたどりついた「星の丘」。
そこにぽつんと座っていたのが——
不思議な模様と大きな瞳をもった、やさしい顔の動物。
それがこの子、「バク」です。
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バクはとてもおだやかで、ふんわりとした空気をまとったような存在。
目はくりくりしていて、話し方もやさしく、はじめて出会ったロロにもまるで昔からの友だちのように微笑んでくれました。
🐾「よく来たね。ぼくはバク。……でもね、夢は食べないんだよ。」
その言葉にロロはちょっとびっくりして、そしてにっこり。
🐼「じゃあ、いっしょに夢を見ようよ!」
こうして、ふたりのふしぎな夜がはじまりました。
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バクは、空の星をながめながら夢を語るのがだいすき。
「むかし、空に泳ぐ魚を見たことがあるんだ」とか、
「いつか夜の森で光る花を探してみたいんだ」とか、
どれも静かでやさしくて、まるで星のしずくが落ちてくるようなお話ばかり。
ロロは、となりでその話を聞いているうちに、なんだか自分の中にも夢がふくらんでいくのを感じました。
「ぼくの夢はね、もっともっとたくさんの友だちに会って、いっしょに笑いたいんだ」
バクはうれしそうに目を細めて、「それ、すてきな夢だね」と言ってくれました。
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ふたりは朝まで語りあって、
やがて空がうっすら明るくなったころ、バクが教えてくれました。
「見て、あそこに咲いてるのが“星の花”だよ。
いちばんきれいに見えるのは、夢を語った朝なんだ。」
ロロとバクは並んで、夜明けの丘に咲く星の花を見つめました。
きらきらと輝くその花は、まるでふたりの夢が形になったようでした。
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夢を食べないバクは、夢を大切にするバク。
誰かの夢を奪うのではなく、そっと見守り、いっしょに感じてくれる存在です。
ロロにとってバクは、心の中にそっと灯りをともしてくれるような、
やさしい夜のともだちです